投稿者: takashi akitaya

  • 日記的状況

    昼過ぎに傘を持って家を出た。天気予報を見ないから、傘を持って家を出ることなどほとんどないのに、今日は持っていた。

     外出したのは藤本タツキの『ルックバック』を新宿バルト9へ観に行くためだった。
     アニメを見ると、イケメンや美女を描けてもブサイクな男や女を描くことはできないのか、と思うことがよくある。ブサイクキャラのようなのは描かれることはよくあるが、目に優しくデフォルメされているために不快でない。ブサイクとは不快なことであるから、デフォルメされたブサイクキャラはブサイクではない。
     ところが『ルックバック』の京本を見て、下顎が出ていて、「ブサイクだ」と思った。そこが良かった。

     Blanky Jet City(最近聴いてる)の名曲『赤いタンバリン』に、「欠落した俺の感性に響くぜ」という歌詞があるが、上映中ほとんどずっと涙を流していた俺の感性は素朴だと思う。欠落しろよ、と思う。言うまでもなく、創作にはそうでなかった現実に対して、本当はそうであってほしかったことを観客の実感に触れ、語りかけるように伝える力がある。俺はあんなふうに若い人が互いを必要としながら生きていく姿が眩しくて、だからずっと泣けた。それにharuka nakamuraの音楽だって、あれは人泣かすために書いてるでしょう。

    映画が終わり、エスカレータに乗り、バルト9の10階から見下ろす新宿、文化服装学院やオペラシティの方へと抜ける甲州街道を眺めていると、非常に虚しい気持ちになった。新宿区に住んで一年と少し、新宿駅周辺には何も無いなと、来るたびに思うけど、俺はモンベル新宿南口店やセガフレード・ザネッティ・エスプレッソ新宿南口店のおかげで、新宿南口とバスタの間を抜けるあの大通りに愛着を持ち始めていた。それなのに、である。

    脇には新宿高校を見下ろす。実験室か調理室のように見える部屋には電気がついたままで、6人掛けほどの大きな机の上に、丸い背もたれの無い椅子が逆さになって並べられていた。

    大学一年の時、同じ学部に自分と同じように孤立した男がいて、少しの間キャンパス内で一緒に時間を潰していたことがある。坊主頭で広い額をした鋭い目つきのそいつは、いつもキャンパスをタイヤの大きな黒い自転車(ファットバイクというらしい)で移動していて、見たことのないアウトドアメーカーのジャケットを着ていた。学部を主席で入学した勉強のできる男だった。東京出身のそいつになぜ北海道に来たかと聞くと、山が好きで、山岳レスキュー隊になりたいと、驚くほどまっすぐに答えたのを覚えている。
    その後俺は留年し、そいつも留年し、俺は5年で卒業したけど、そいつは気付けば学部棟で見かけることもなくなったし、最後に会った時には2回目の留年をしたと言っていた気がする。その頃のことはもうあまり覚えていないし、名前も思い出せないのだけど、そいつは新宿高校出身だった。

     その後、そのまま帰宅しても良かったのだけど、結局いつものように紀伊國屋新宿本店へ寄り、最近気にしている琳派に関する本を求め、『光悦 琳派の創始者』を買おうと手に取ってみたが、税込4950円で、「たか」と思い棚に戻した。芸術関連の書籍は5階にあるのだけど、あそこのエレベーターは待っても中々来ないし、階段で向かうには少し疲れる。人文・社会の3階と同じフロアにしてほしい。それにあの店にはなぜか制服を着たエレベーターガールがまだいる。

     ついでに向かいにある北村写真機店に寄り、先週現像をお願いしていたデータを受け取りに行き、仕上がりを確認し、ほとんどがピントが合っておらずがっかりした。日記のようなものを書きたかったのだが、飽きたので寝ることにする。この後パブでビールを1パイント飲み、タバコを2本吸って家に帰った。