5.4

自販機の横に置いてあるゴミ箱の上には箱に入りきらなかったペットボトルやアルミ缶が雑然と並べられていた。目の前を腰の曲がった老婆がゆっくりと歩いていく。週末の午後、まだそう暑くならない季節のこの古びた証券街は青空の下にあり、ビルの合間を突き抜ける穏やかな風は老婆をいっとき包んで忘れていく。灰色のブラウスから覗かない右腕の先には、ライトグリーンの薄い綿布が掛けられていて、さっきの風はそれを揺らしたと思う。彼女の右腕には肘から下がついていなかった。

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